気まぐれヒーロー




花鳥 響(はなどり きょう)


享年十八


早すぎる死だった。


原因はバイク事故。
あっけなく、お兄ちゃんは逝ってしまった。


私が知らないうちに、知らないところで。

いとも簡単に、一人の命は散っていった。



『きょーにいちゃん!!』



遺体の入った棺に縋りつく、あの日の自分の声が響く。

もう笑ってくれない。
もう頭を撫でてくれない。

「もも」って、穏やかに私を呼ぶ声は、戻らない。


お兄ちゃんが最後に誰といたのか、どんな風に過ごしていたのか。

今もそれはわからないけれど、警察の人によれば、かなりスピードを出していたらしい。

まるで“何か”に呼び寄せられるように。
急がなければならない理由が、あったのかもしれない。


不良は好きじゃないけど、お兄ちゃんは大好きだった。

私が今こんな状況だと知ったら、お兄ちゃんはなんて言うだろう。


やっぱり笑うかな。

笑って、こう言うかな。


『なんだよ、そのクリスマスみたいな頭のヤツら。俺にも会わせろよ』


……クリスマス。

緑と赤。

うん、確かにクリスマスカラーだ。