気まぐれヒーロー



助手席にはタイガ。

後部座席には……ジローさん。


当然後ろに座っていた私は、入り込んできたジローさんとばっちり視線がぶつかってしまった。

まさか私が乗っているだなんて、思いもしなかったんだろう。


ジローさんは瞬きもせず、切れ長の目をほんの僅かに見開いていた。



沈黙がこの場を、支配する。



夜に彼らと会うのは、これが初めてだった。

昼のイメージを覆すその光景に、何が本当かわからなくなる。


ジローさんの瞳には様々な色が、混ざっていた。


困惑。疑問。迷い。失態。諦め。


クールなその顔にあからさまには出さないものの、普段とは異なる彼の空気が告げる。


私の憶測でしか、ないけれど。




“見ていたのか”



“見てしまったのか”




彼の微かに揺らぐ瞳が……そう語る。



「お!?なんだオメー、ユーレイかと思ったじゃねーか!!影と一体化してんじゃねーよ!!ビビらせんな!!」



気まずいなか、よく通るうるさい声が割り込んできた。

後ろを振り返ったタイガが私を見るやいなや、大げさに驚いていた。


先程の不良達の前で見せていた顔はどこにいったのか、もう元のタイガだった。


ふん。どーせ暗いわよ、影にだって紛れ込んじゃうわよ。取り憑いてやろうか。


「なんでタマちゃんが乗ってんの」


今度は横にいる運転席の飛野さんに、聞いていた。


「ジローんちの夕飯に招待したんだよ」


バックミラー越しに飛野さんと目が合うと、縮こまる私に彼はにこりと笑ってくれた。

やっぱり飛野さん、独断で決めちゃってたのかな。


ジローさん……いきなりお邪魔しちゃったりしたら、困るんじゃないかな。