通り過ぎるだろうと思っていた怪しげなその車は、校門の前に立つ私の正面でスッと停車した。
全面スモーク張りのせいで、窓からは中が窺えない。めちゃくちゃ不審っていうか……危なそうな、車。
な、なに?なんでここに停まるの!?恐いんだけど!?
なんて、ビクビクしてたら。
窓が自動で下りて、運転手の顔が見えた。
「乗って」
いかにも高級そうな黒塗りの車を運転していたのは、飛野さんだった。
まさか、車で迎えに来るだなんて考えてもなかったから
てくてく歩いてくんだって、決め付けてたから
私の中の時間が、止まった。
飛野さんは私服に着替えてて、大人の色気がムンムンだった。
もとから大人っぽいから、制服を脱ぐととても高校生には見えない。
車のハンドルを握っているから、余計に。
「花鳥、乗ってくんねえかな」
ぼーっと飛野さんに見惚れていると、飛野さんが苦笑しながら見上げてきた。
慌てて乗り込もうとするも助手席か後部座席かで迷う私に、「好きなほうでいいよ」と飛野さんは助け船を出してくれた。
助手席に座るのはなんかおこがましいというか畏れ多いというか、私なんかが乗っちゃいけない気がしたから後ろにまわって乗り込んだ。
黒革のシートは「わぁ」なんて声が漏れちゃうくらい、座り心地がいい。
無駄を削ぎ落としたような、シックで上品な内装。
ほんのりとレザーの香りが漂う。
高そうなこの車は何というか……う、裏の世界の方々がご使用になられるような風格を纏っていた。
これ、飛野さんの車なんだろうか。
いったい飛野さんって何者!?
って、内心訝しんでいると
「俺の車じゃねえよ」
可笑しそうに、飛野さんが教えてくれた。
つくづく私は顔に出やすいらしい。
飛野さんの車じゃなかったら誰の車なんだろう、なんて
さらなる疑問を募らせる私をよそに、彼はアクセルを踏んだ。


