畳み掛けられた数々の事態に、思考が、心が追いつかない。午後の授業も、頭に入らなかった。
ミスコンのことさえ、どっかにいっていた。
ただただ、響兄ちゃんと……まだ見ぬジローさんのお兄さんに思いを馳せるばかりで。
放課後、屋台の看板に焼きそばの絵を描く作業をしていたのに、それさえも出来上がったら変なもじゃもじゃアフロのおじさんの絵になってたりで。
集中力散漫もいいところで、グダグダだった。
その日の作業が終わったのは、夕方の六時半を少し過ぎた頃だった。
後片付けしてみんなで校門まで一緒に帰って別れた後に、私はまずお母さんに電話して友達と晩ご飯を食べると連絡しておいた。
それから、飛野さんに電話してみた。
出てくれるまでの間のコール音にやたらドキドキしちゃって、『ドッキリだよ~ん』なんて言われたらどうしようとか考えちゃったりして。
でも、
『おー、終わったのか?お疲れさん』
電話に出てくれた飛野さんは、いたって普通だった。少し明るめの声で、安心させてくれた。
「えっと、あの、私どうしたら……」
『ああ、校門出たとこで待っててくれねえか?そこまで行くから』
「あ、はい」
電話を切った後、ふうっと息を吐き出す。
胸に手を持っていけば、速まる鼓動に緊張が乗っかる。
不安になってきた。何もかもが初めてで、十分に心構えができてなくて。
日が暮れてきて、次第に辺りに闇が降りてくる。
校舎もグランドも暗い影に包まれようとしていて、下校する生徒も僅かだった。
そわそわしながら待っていると、右の方から徐行運転でこちらに来る車が目に入った。
ヘッドライトが薄闇から、私を照らし出す。
真っ黒の、スマートな車。


