今しがた、お兄ちゃんの話が出たばかりなのに。
ジローさんにお兄さんがいて、さらに響兄ちゃんと知り合いで。
それでもって、今日ジローさんの家に行くだなんて……!!
「大丈夫だ、堅くなる必要はねえから。みんな自由に暮らしてる。ヤロウばっかでちょいとむさ苦しいけどな」
私の腰が引けてるのを察したのか、飛野さんは朗らかに笑ってそう言った。
いや、そんなこと言われても、「はいそうですか」って簡単に納得できない!!
っていうか、ジローさんの許可もなしにそんなこと勝手に決めちゃっていいの!?
飛野さん、まるで自分の家みたいに招いちゃってるけどそれでいいの!?
「じゃ、その居残り作業が終わる頃に迎えに行くから」
「え、でも何時に終わるかわかんないですよ?」
「あー、そうだったな。ちょっとスマホ貸してくんねえか」
「は、はい」
飛野さんの頼みに、私は自分のスマホを彼に手渡した。
何やら操作している飛野さん。
「俺の連絡先入れといたから、終わったら電話して」
どうやらハイジ同様、彼も私のスマホに自分の番号を登録してくれたらしく。
返されたソレに、視線を落とした。
名前の欄には『飛野』とだけ入力されている。
よかった。
ハイジみたいに飛野さんまで『今世紀最後のハンサムマン飛野様』とか、変な名前で登録されてなくて、よかった。
「それじゃ、また後でな」
ほぼ強引にジローさんのおうち行きを決定した飛野さんは目元を緩め、再び大教室へと戻っていった。
淡々と、重大事実を置き土産にして。
残された私はしばらくの間、その場に立ち尽くすしかなかった。


