そのけたたましい音に、思わずビクンと体が跳ねる。
早く取れとばかりに主張する、騒音まがいの着信音。
私のお向かいさんのソファーに腰掛けている、金髪が主のようだった。
タイガは一度誰からかかってきてるのかディスプレイに視線を落とし確かめると、電話に出た。
「どうかしたか」
たぶん、電話の相手は男。
タイガの口調がそう表していた。女の子に向けるものじゃない。和らげた声じゃなかった。
少しだけ重みのある、低声。
会話の内容は、私には何のことだか理解できなかった。
「人数を増やすしかねえな」とか「バレねえ程度にやっとけ」というセリフ。
話している間、タイガは真顔だった。
にやけてもなく、いやらしくもなく。
“黒羽大駕”の顔がそこにはあった。
そしてうすうす、これは彼らの世界のことなんだろうと感づいた。
私には決して見せてはくれない、“彼らだけ”の領域。
魁帝の事件の時に知った空気に、似ていた。
ちょっとしてからタイガは話し終えスマホをしまうと、白い煙を吐き出しながら、短くなったタバコの火を灰皿で消して捨てた。
「こないだよ、女が襲われたろ」
不意に紡がれる言葉。
タイガのその言葉は、ハイジに向けられている。
「ああ、聞いた。けど助けたんだろ?ヤられる前に」
当然のように、それが日常での一コマであるかのようにハイジが返事を返す。
“女が襲われた”?
微かに、胸がざわめいた。
犯罪の匂いを漂わせるそのセリフを、タイガは何の躊躇いもなく口にした。
彼らが持つこういった一面に、戸惑ってしまう。
さっきまでフザけてたくせに、途端に取り巻く空気をがらりと変化させる。
そんな彼らの二面性に、奇妙なズレが生まれていく。
どっちが本当の顔なの?
偽りはどっち?
それとも……両方あんた達の“顔”なの?
「それが懲りてなかったらしくてな、俺らの目の届かねえとこでカモを狙ってんだとよ」
「ふーん。で、南高のヤツらも総動員?」
「まーな。仕事が増えたって嘆いてやがったけどな」


