気まぐれヒーロー



「俺は日曜予定あるから、パスな」


タイガはそう言ってタバコを取り出すと、一本火を点けた。


白い煙がゆっくりと昇り、宙に溶けていく。

始めからタイガとデートする気なんてなかったし、それはそれでいい。

というよりも、誰ともデートしたいと思わない。


ハイジのせいで妙な流れになってはいるけど、従う義務はないし。

だいたい、デートして何になるっていうのよ。


男を知る?何したら男を知るってことになるの?デートしたら、男というものをマスターしちゃうの?


そしたら『イイ女』になれるの?

いや、そんな簡単になれるわけがない。
たった一回のデートだけで。


……彼氏がいて、日常的にデートしたりしてる子って、男を知り尽くしちゃったりしてるの?

もう“師範代”レベル?


みんなそうなの?男を手の平で転がしちゃったり?

私なんて白帯のぺーぺーなんだけど!?転がすどころか、転がされまくりなんだけど!?

そんでもって丸められちゃって、ピーンって指で弾かれてハナクソ扱いされるようなレベルじゃん!!




「じゃあ決まりだな」




ハイジが、口を開いた。


白帯締めて巨大な手と脳内で闘う私に、にんまり笑いかけてきた。



「決まり……って、何が決まったの」



学習してるから。


ハイジのこの笑みが、不幸の入り口だってこと。




「俺とデートしようぜ、ももちゃん」




ほっぺたをつねってみた。


痛かった。


テーブルに頭を打ち付けてみた。


痛かった。


タイガをこちょこちょしてみた。


怒られた。




残念なことに、私はれっきとした現実世界に存在していた。