気まぐれヒーロー



「ももちゃん、もうすぐ文化祭だよな?ちらっと噂で聞いたんだけどよォ……」

「な、なに?」


イヤだ、文化祭なんて単語がコイツの口から出てくるなんておかしいし……!!

ハイジの言葉に、瞬間的に肩に力が入る。
そんな私に、ヤツは一枚のチラシを突きつけてきた。


私は目を凝らして、ソレを穴が開くほどに見つめてみた。



「ミス・北遥コンテスト……?」



鮮やかな何色もの色で派手にチラシ上に彩られた、『ミス・北遥コンテスト!』の文字。


これは……まさか……



「ねぇ、ハイジ……これって……」

「そ、ミスコンだよももちゃん」

「あんた、もしかしてソレに……」

「うん、出場希望出しといたからね。“花鳥もも”で」



ニコニコと気持ち悪いくらいの満面の笑みで、この世の終わりと同等のセリフを吐いてくれたハイジ。


「マジかオメー!!オモシロそーだなオイ!」と手を打って喜ぶタイガの声も、頭が真っ白になった私にはシャットアウトされていた。


ちょっ……え、なに……?
今コイツ、なんて言った……?


ミスコンって、アレよね……一番美人な女の子を選ぶ、アレ……よね?文化祭でミスコンやるの?


そんでもってそのコンテストに……私が出る?
ミスコンなんかとは一生縁のない、地味キングな私が!?


待ってよ、待って……ありえないから。なんでそんなことになってんの!?


普通にありえないから!!


「ハイジ!!!あんた勝手に何やっ──」
「それとお前。今度の日曜空けとけよ」


ハイジの胸ぐらを両手で掴んで、思いっきり文句を言ってやろうと思ったのに。


そんな私の勢いを、次に続くセリフで殺してしまったハイジ。



「なん、で……?」



ヤツは胸ぐら掴まれてんのに悠々とソファーに座ったまま、固まる私に口角を持ち上げて、意地悪な笑みを作ってみせた。


私を見上げるハイジの目は、完全に悪巧みの色に染まっていた。




「デートすんだよ、デート」