教室からその光景を眺めていると、私と同じく二人を見下ろしていた子達が「またアレやってるね、『ハイパー羽子板』」と言っていた。
……ハイパー羽子板?いや、アレ羽子板のハネじゃないし。っていうか、なんで今頃羽子板なの?
なんてツッコミは一応、心の中に秘めておいた。
どうもそう名付けたのはあの二人らしい。
二人の攻防は凄まじく、何回ラリーしたか数え切れないくらい続いていた。
この人達、めちゃくちゃ運動神経がいい。
「うらぁ!これで俺の勝ちやハイジ!!」
ケイジくんが渾身の一撃を放った。
スマッシュ並みの速度で打ち返されたハネが軌道を大きく逸れ、校舎の二階の窓に突っ込んでくる。
ファールじゃないの、なんて思ってたらどんな場所に行っても打ち返せないと負けらしい。
そう隣の子が言ってた。それがハイパー羽子板のルールらしい。
「ナメんなよケイジ、これぐらいで俺が諦めると思ったか!!」
自信満々の笑みでそう言うと、ハイジは陸上選手並みの走りを見せ、校舎に向かっていく。
そして一階の窓の枠を踏み台にすると、思いっきり跳躍した。
す、すごいジャンプ力……!!
「勝利は俺のモンだ!!」
体を反らせラケットを構えると、ハイジはありったけの力でハネを打った。
これまた何百キロ出てんだってくらいのスピードで、飛んでいくハネ。
けれども。
「ああっ!」
前にあった木の枝に、ハネは引っかかってしまった。
「あーあ、お前の負けやなハイジ」
「んだとコラ!今の、俺だったら打ち返せてたぞ!お前の負けだろーが!!」
「アホか、お前でもムリに決まっとるやろ!!」
勝敗について言い争う双子。
一部始終を見て、思った。
何やっとるんだコイツらは、と。
結局引き分けになったらしく、双子はどこかに行ってしまった。
それにしても、あの人達の運動能力って人並み外れてる。
何かスポーツやれば、絶対活躍できるだろうに。
不良なのが惜しい。
そして授業も出ずにこんなことばっかしてるのかと思うと、アホらしくなった。

