「コラァお前らぁ!!何をフザけとるんだ、今は授業中だろうがぁ!!」
あ、この声……生活指導の鬼教師、沢北先生の声だ。
一見『ヤ』のつくコワーイ世界の人に見えそうな風貌の、先生。実際中身もコワーイのだけど。
「ヤベ、鬼北だ!逃げんぞ……ってテメー!!俺をオトリにしてんじゃねえ!ぶっ殺すぞ!!」
どうやらキング二人も、沢北先生は脅威らしく。
ジローさんはタイガをオトリにして、ちゃっちゃと逃げたらしい。
二人を怒鳴る沢北先生の声と、ぎゃーぎゃーうるさいタイガの声が遠ざかっていき、やがて完全に聞こえなくなった。
授業妨害もいいとこで、みんなテンション上がっちゃってその後は授業にならなかった。
ほんっとうに迷惑な二人だった。
それから数十分後、また廊下を誰かが歩いていた。よく見たら、飛野さんと一人の先生だった。
「まったく……飛野、お前はどうなってるんだ。自分の教室と間違えて校長室に入っていくヤツがあるか」
「い、いや、おかしいっスね……この地図通りに行ったはずなんスけど」
「ん?なんだこの落書きみたいな地図は」
「それは、その……後輩にもらったヤツで……」
飛野さんの迷子癖が出てしまったらしい。
彼は学校の中でさえ、迷っていた。
たぶんあの先生は飛野さんの担任なんだろう。飛野さんは照れながらも、先生についていっていた。
あれさえなければ欠点なんてなさそうなのになぁと残念な思いでいると、今度はグランドから声がしてきた。
「ケイジ、今日こそ決着つけようじゃねーか!」
「おー、のぞむところや。俺の方が上ってことをお前に証明したるわ」
そっちに目をやれば緑と赤が、グランドに立って向かい合っていた。
彼らの手にはなぜか、卓球のラケットが握られている。
今から卓球の試合でもするのかと思いきや。
ハイジはどこからともなく、バドミントンのハネを取り出した。
卓球の球じゃねーのかよ!とツッコミそうになった。
「オラァ!!」
「こいや!!」
そして二人はよくわからん競技を始めた。

