……気がつけば、近頃頭の中は白鷹ファミリーでいっぱいだ。私の生活、ほとんど彼らに支配されている。
ため息をついて、黒板の文字をノートに書き写していると。
「おいコラ、ジローてめえ!!俺のチョコあんパン勝手に食ってんじゃねーよ!!」
突然、授業中の静かな廊下に男の大声が響き渡った。
それに続いて、バタバタと忙しない足音が追いついてくる。
「トラのじゃねーよ、机の上に置いてあったんだ」
「ザケんな、俺が食おうと思って置いてたんだよボケ!!」
……これは、もしや……
私は一旦シャーペンの動きを、止めた。
廊下を走る音が徐々にこちらに近づいてくる。
そして。
「チョコあんパンが俺に、『食ってくれ』ってお願いしてきたんだよ」
「オメーはパンの言葉がわかんのかよ!?どんなミラクルマンだてめえは!!」
バッと廊下の方へ視線をやれば、嫌な予感は見事に的中した。
私の教室の前を走り抜けていく、パンをくわえた銀髪。
その後を怒りながら追っかけていく、金髪。
私はごしごしと目を擦ってみた。
「えー、なになに!?白鷹先輩と黒羽先輩だぁ」
「何してんのかな、パンがどうとか言ってたよね~」
「堂々と授業サボってるよな」
クラスメイト達もいつものごとく、ジローさんとタイガを一目見ようと廊下側の窓へと一斉に詰め寄っていった。
「返せ、今すぐ返しやがれ!!俺はチョコあんパンくんを食わねえと、一日が始まんねーんだよ!!」
「もう食った」
「あぁ!?ジョーダンじゃねえぞ、出せバカヤロウ!!」
「ほい」
「っ、!ほんとに出すヤツがあるかお前、きったねえ!デロデロになってんじゃねーか!?戻せ戻せ、ほれ!」
過ぎ去っていった彼らの会話だけが聞こえてきて、想像するのも恐ろしい状況になってるのは確認しなくたって理解できた。
っていうか、見たくない。
隣のクラスも、その隣のクラスもうるさくなってる。
先生達の注意する声が混じっているけど、あのワンパクキング達には効かなかった。

