「ええよ。ま~たまには、そーいうんも新鮮やしなぁ。これから覚えといてくれたらええわ。俺の名前、慧次やし。風切慧次」
息を吹き返した赤ハイジ……もといケイジくんは、壁に寄っかかってタバコを制服のポケットから取り出すと、一本火を点けて吸い出した。
昨日のハイジみたいだと、思った。
ニッと笑って挑戦的な眼差しで私を縛りつける彼は、確かに自分でも言ってたとおりイケメンだった。
でもそれより何より校内で堂々とタバコを吸うケイジくんに、私はヒヤヒヤして仕方がなかった。
「ケイジくん……か。ん?風切?風切って、ハイジと同じ名字じゃん!!」
驚きのあまり目を丸くする私に言い放った、ケイジくんの一言。
「そらそうやろ、俺とハイジ──双子やもん」
……あ、そっか。
っていうか、もっと早く気づけよ自分……!!
考えればすぐにわかることだった。
「あは、は……」
脱力し遠くを眺めると、自然と乾いた笑いが零れる。
「気色悪ィなお前」というハイジの若干引いてる声が聞こえた気がしたけど、もう怒る気力もなかった。

