気まぐれヒーロー



一回深呼吸をして、恐る恐るジローさんに聞いてみた。


「あの、ウサギって……小春が?」

「おう。まさかオトモダチがウサギとはな」



開いた口が塞がらなかった。


発狂しそうになった。



どうやら、彼の目には小春がウサギに映っていたらしく。

私が犬に見えるように、小春はウサギに見えているらしい。


そして小型犬とウサギが仲良くしている図は、ジローさんにとってはサイコーに可愛い組み合わせらしく、彼のツボを刺激しまくりだと。



全ての謎が解けた。


女嫌いが治ったわけじゃなかった。


彼にとっては小春はキューティーハニーではなく、キューティーバニーだったのだ。


とんだ勘違いだった。


“人間”として、彼女を好きだったわけじゃなかったんだ。


私、なにを悩んでたんだろう。


本気で……疲れた。


ジローさんは一枚どころか、百枚くらい上手だった。

やはりマジシャンなだけあって、彼は私なんかじゃ手に負えない。


こうして、『ジローさん小春に一目惚れ疑惑』はあっけなく終結したのだった。



「悪かったな、お前がヤキモチ妬くなんて思わなかった」



そう言いながらも悪びれるどころか、嬉しそうなジローさん。


人の気持ちも知らないで。



「もう言わねえよ。お前に嫌な思いさせたくねえし、お前に嫌われんのはキツい。俺にはお前だけでいい」



だけど、私の頭を撫でながらジローさんがそんなことを優しい声で言ってくれるから。

まぁいっかって、思ってしまう。

だって、安心しちゃったんだもん。

根本的なことが解決したわけじゃないけど、すごくほっとしている自分がいた。


私もとことん単純だ。

でも、それで終わりじゃない。

顎に指をあてられて、上を向かせられる。
交わり合う、私とジローさんの視線。


ああ、この人なんて色っぽいんだろう……なんて見惚れてる場合じゃない。



「俺を舐めろよ」



問題は、ここからだ。