気まぐれヒーロー



ふははは!どうだ、これでラスボスジローは灼熱のマグマに落下するはず……



「座ってくんねえ?」



なかった。


ジョークをかわしたジローさんの瞳の奥に、まるで切れ味のいい刃みたいな鋭さが潜んでいる気がして。

私はやっちまったと激しく後悔し、大人しく腰を下ろした。


結局さっきと同様の体勢で向き合う、私とジローさん。

どう足掻いたって、逃げられないんだ。


ジローさんは黙っているけれど、目が「早く舐めろ」と訴えかけてきていた。


「私……昨日、すごく嬉しかったんです」


急に全然関係ない話を切り出してみても、ジローさんは怪訝そうな顔をしたものの、口を挟むことはなかった。


「私なんかのお願いを聞いてくれたことが。ジローさんが助けてくれなかったら、どんな目にあってたかわからなかった。ありがとうございます、ジローさん。とっても素敵でした」


ジローさんに笑いかけても、彼は表情を動かさなかった。なんでそんなこと言われるんだろう、というような眼差しだった。



「あのね、その時……ジローさん、小春を見たでしょ?可愛いって言ってましたよね、気に入っちゃいました?小春のこと……」



何を、言い出すんだろうこの口は。

こんなこと、彼に聞いてどうするの?



「小春のこと……好き、ですか?」



止まらない。


駆けだした想いが、歯止めをきかなくさせる。


私はジローさんが小春にいっちゃっても、大丈夫だって、仕方ないって……受け入れようって覚悟したのに。


それでも、理屈じゃなかった。


もうジローさんに惹かれていってるから。


私は……ジローさんが、好きだから。



彼に恋、してしまったから。



だから

好きな人が違う子を好きでいるのに、『舐める』ことなんてできない。


もし、ジローさんが「好きだ」って言ったら?



全部捨てよう。


今のこの気持ち。彼に対する想い。

全部、捨て去ってしまおう。