気まぐれヒーロー



自分の立場をわきまえなきゃ。月とスッポンもいいとこじゃん。

第一、私の場合……まず女として見てもらうとこから始めなきゃいけないなんて。


ふっ……笑うしかないじゃんよ。


「タマ、こっち見ろよ」


鬱々してる私の頬に指を添え、自分の方へ向けさせるジローさん。


そんなさらりと触れられるだけで、こんなにもいっぱいいっぱいな私に、気づかないでしょう?



「なぁ」



どうしたら、私……



「舐めて」



あなたにとって、“女”になれるの?



静かな、昼下がりの午後。


二人っきりの屋上。

私の前にいる美男子は、じぃっと私の顔を凝視している。


微かに開かれた唇も、彼の色気を滲み出させていた。

妖艶な眼差しで。
低くてどこか甘めな声で、「舐めて」なんて言われたら。


クラクラしちゃうじゃん。全身の骨が砕けて複雑骨折になっちゃうじゃん。

そしたらふにゃふにゃになっちゃう。軟体動物に。
朝美のお仲間になるのだけは、ごめんだ。



「ど、どこを?」



前回と同じ質問をしてしまう。


だってね、気になるじゃん!?

「舐めて」に対して「どこ舐めるの」って疑問を抱くのは、当然でしょ!?



「ココに決まってんだろ」



前は教えてくれなかったのに。

ジローさんはぐぐっと私に身を寄せて、間近で。

その長くて綺麗な指で、私の唇をスッとなぞった。


気を失いかけた。


ジローさんの溢れんばかりのフェロモンを直に浴びてしまった私は、マジで鼻血が出そうなくらいに熱くなって、軽く目眩がした。


無理。

女を瞬殺できるセクシーフェロモンがムンムンな今のジローさんには、太刀打ちできない。


恋愛レベル1未満な私には、クリボーだって倒せやしないのに。

ラスボスレベルなジローさんはクッパなんだから、到底無理だ。


クッパ……クッパってどうやって倒すんだっけ。



そうだ。


私はすくっと立ち上がった。


そして



「びよーん」



と、座っているジローさんの体を飛び越えてみた。