気まぐれヒーロー



相変わらずの魔王の氷の微笑に、気を抜けば「あのキューティーなヤンキーくんです」なんて口を滑らせて、かっちゃんを指差してしまいそうで。


そうなったら、かっちゃんのキューティーなフェイスが惨いことになってしまうのは目に見えてる。小春がぶっ倒れちゃうくらいに。


っていうか、彼らに罪はないし!理不尽にジローさんの八つ当たりで、とばっちりをくらわせる訳にはいかん!!


「なぁ。お礼したいんだろ?俺も“お礼”がしてえ」


だから、ジローさんの言う“お礼”は物騒なんですってば!!



魔王。覇王。帝王。大王。キング。


そう、彼は“王”だった。紛れもなく。


王と付くものの全ての称号を、手にしている。



普段はナマケモノなくせに、ちょいと本気を出せば

彼は簡単に王者へと──変貌してしまう。


誰も逆らえない。本能がそう叫ぶから。


従えと。逆らうべきではないと。



この男は、頂点に君臨する男だと。



何人たりとも反抗を決して許さないオーラと、見る者全てを虜にしてしまう美麗な容姿。



王である彼にだけ与えられた、武器。




わかってます。あなたに絶対的な権力があること。



でもね、ジローさん


なにも……なにも今、その本領を発揮しなくてもいいじゃんよ!?


「や、いいです。教室、戻らなくていいです!ジローさん、屋上行きましょう!?」


身震いした私は必死に首を横に振って、屋上へと魔王を誘導することにした。


人の命と、私の初体験への未知なる恐怖心からの逃亡。


そんなもんハカリにかけなくたって、どっちを取るべきか答えは出てる。


いや、まあ一瞬彼らを犠牲にしてもいっかなんて思ったことは内緒で。


それに初体験ったって、べ、別にあーんなことやこーんなことをするわけじゃないし!?ジローさんだし!?
相手がタイガだっていうんなら、彼らを喜んで生け贄に差し出してたかもしんないけどね!?


なんてぐるぐる考えてたら、「そうか、お前もそんなにやりてえのか」と嬉しそうにジローさんは屋上へと再び歩き出した。