「こ、こんにちはジローさん」
ジローさんの美貌にあてられた私は、なんだかぎこちない挨拶を彼にしてしまっていた。
ゆっくりと近づいてくる、ジローさん。
目の前まで来ると、彼は無言で私の手を引いて屋上へと引っ張っていこうとした。
「わわっ、ちょ、ジローさん!!私、中に入ってみなさんに色々言うことが……!!」
ぐいぐい引かれながらも、私は懸命にジローさんの背に声をかけた。
教室にも入れてもらえないまま、一刻も待てないというように突き進むジローさんが私の焦燥感を煽り立てる。
心の準備ができてないのに。
いや、どれだけ時間をもらおうとも、ジローさんを“舐める”という行為に踏ん切りなんてつかないけども……!!
だから少しでも時間を稼ぎたくて、特に白鷹ファミリーに用なんてないけどそう言ってみた。
「アイツらに何言うことがあんだよ」
やっと口を開いてはくれたけど、無愛想な声色。
その間も私を強引に、屋上へ導いていくジローさん。
握られた手が、熱い。
ま、待って。ちょっと待って。直行はダメ。
何かワンクッション置いてジローさん!!
私に猶予をください!!
「昨日送ってくれたおにーさんと、小春を送ってくれたかっちゃんにお礼を……」
「……そうだった。昨日お前と、お前のオトモダチを俺から奪ったヤロウに、礼をしとこうと思ってたんだ。どいつだよ」
私のセリフに魔王ジローは足を止め、冷や汗流れちゃうくらい綺麗な笑顔をこっちに向けてくれた。
そんなアブナイ笑みにも、不覚にもトキめいちゃう。色気ムンムンな魔王に、そのお顔を直視できない。
彼のフェロモンに、うっかり昨日の四人を教えてしまいそうになった。
けれどかろうじて残った理性でそれは彼らの命を危険に晒してしまうことになると思い、どうにかお口チャックしておいた。
「タマ、戻ろうぜ。“かっちゃん”ってのがどのヤロウか教えろよ」


