気まぐれヒーロー




「あ、違うの!本当に覗くつもりじゃなくて、たまたまで!たまたまここに来たらたまたまちゅーしてたから、たまたま見てしまっただけで……」

「おい、お前タマタマを連呼しすぎだろ!そんなに好きなのか男のタマタマが」


…………。

なんて下品なセリフ。
こんなこと言うヤツは、私の中で一人しか心当たりがない。

そーっと声がした方に顔を向ければ……


「ももちゃんったら過激~」


緑ハイジと、その他大勢がいた。

私の逃亡劇は、あっという間に幕を閉じたのであった。


「お~、ハイジやん。珍しいなお前がこんなとこうろついてんの」

「ケイジ!お前こそ何してんだよ」


赤ハイジが緑ハイジにへらへら話しかけている。そしてそれに答える緑ハイジ。

並んだ二人は背丈から制服の着崩し方まで本当にそっくりで、見分けるには髪の色しかないと思っていたけど。

よく見れば、髪型も違う。
緑ハイジはツンツンと立てているのに対して、赤ハイジはおろしている。

それより……ドッペルくんと本物のご対面じゃないの!!ヤバくない!?ヤバいよね!?


どっちかが死んじゃう……!!

あれ、でも今……緑ハイジは赤ハイジのことを「ケイジ」って言わなかった?
しかも赤ハイジよ、なぜに関西弁なんだい。

いまだ謎が解けない私をよそに、会話を続ける二人。


私の予想は外れ、どっちかが白目剥いて倒れるなんて事態は起こらなかった。


「ハコにはジローちゃんおるから、女連れ込めんやろ?せやし、ここでちょこっと欲求不満解消しよて思てんけどな。このおねーさんに邪魔されたわ~」

「そうか、ももちゃんを興奮させちまったか!だからタマタマ言ってたんだなももちゃんは!ぎゃははは!」


……サイテーだった。
会話を聞くだけで頭が痛くなるのは、初めての経験だった。

そして知らないうちに、赤ハイジと一緒にいた女の子はいなくなっていた。