百メートルほど先に、校門が見えてきた。
生徒の姿も増え始め、沢山の人達が登校する中。
人の群れから一人頭が突き出た、黒髪の人物が目に入った。
あれはもしや……
「おはようございます、飛野さん」
私はその長身の人物に近寄ると、どうしようか迷ったものの挨拶をした。
昨日助けてもらったし、彼は他の四人ほど名が知れていないのか、周りの子に騒がれている様子はなかった。
「お、おお。誰かと思えば……昨日ジローと一緒にいたコか。俺のこと知ってんの?」
私に声をかけられたことがよほど意外だったのか、飛野さんは不意打ちをくらったような顔をしていた。
「はい、ハイジに聞いたんで」
「そうか、あの緑ボーズになぁ。変なこと言ってねえだろうな、アイツ」
ハイジのことを『緑ボーズ』という飛野さんは、笑顔を見せてくれた。
この人はそんなにとっつきにくい雰囲気じゃない。それよりか、優しそうだと思った。
外見が他のいかにもヤンキーなおにーさん達に比べ、それっぽくないからっていうのもあるかもしれない。
けど……昨日魁帝の男達に見せた一面を思い返してみれば、タダモノではなさそうな気もする。
「今日はちゃんと学校に来れたんですね」
「……なかなか言ってくれるな」
迷子になることなく学校にたどり着いた飛野さんに笑ってそう言うと、飛野さんはまいったなと言いたそうに苦笑を漏らす。
「それよりお前、どっかで見たことあるような気がするんだよな……。昨日から考えてんだけど、思い出せねェんだ」
「え、私は飛野さんに会うのは昨日が初めてですけど……」
「そうだよなぁ……けど俺は初めての気がしねえんだよ」
釈然としないといった感じで、私の顔を凝視してくる飛野さん。
人違いじゃないのかな。


