「!!」
私とハイジは、もっと目を点にしていた。
……待って。
普通に歩いていて、電柱にぶつかるかしら。
よそ見してたとかならわかるけど、ジローさん……ちゃんと前見てたよね。
私達は二人して口を閉ざし、ジローさんを眺めていた。
これは……もしかすると、もしかする。
電柱にぶつかっているというのにジローさんは、まだ前に進もうとしていた。
そのせいで何回も頭をゴンゴンとぶつけていて、ずりずりその場で足だけが動いてる。
変なの、と思ってしまった。
女の子は完璧にドン引きだった。
私とハイジはほぼ同時に顔を見合わせた。お互いに真剣な目だった。
そう、私達の心はこの時一つだったのだ。
一度頷き合って、私達は駆けだした。
ハイジは女の子へ。私はジローさんへと。
まずハイジが女の子を口説き、ジローさんから気をそらさせる。
その間に私は未だゴンゴンぶつかり続けているジローさんの体を、頑張って横にずらしてあげた。
見事な連携プレイだった。
ハイジは手慣れたもので女の子は口説き落とされ、さっきのメモをヤツに手渡し赤くなっていた。
もうハイジにメロメロメロンちゃんになってしまったらしい。
不覚にも、やるじゃんとヤツを見直しそうになってしまった。だけど寸前で思いとどまった。
こうして、どうにか女の子の記憶にジローさんの仰天行動が刻まれるのを、私達は防ぐことができたのだった。
ずらしてあげたジローさんは、また歩き出していた。
彼の顔を見上げ、私は謎の行動の原因を把握することができた。
閉じられた、瞼。
この人は寝ながら歩いていたのだ。
うつらうつらしながら、「うーむ……」とか何とかちっちゃく言ってる。
女の子を無視したわけじゃない。
ただ単に彼は、“寝ていた”だけなのだ。


