気まずい。非常に気まずい。
思いっきり睨んでくる二人に、引きつった笑顔しかできない私。
ヤ、ヤバいじゃん!!どうするべき!?
「今日はいい天気ですね~」って言いながら爽やかに通り過ぎてみようか。
……ダメだ、空は曇ってる。
『お若いね~ひゅーひゅー!!やけちゃうよお二人さん!』
…………。
……どこのエロ親父なんだ私は。
足りない脳みそでぐるぐる頭を回転させていると、赤のハイジが口を開いた。
「おねーさん、人のラブシーン覗くんが趣味なんか~?もっと濃厚なやつがよかった?」
ニヤニヤと、憎たらしいくらいハイジにそっくりのいやらしい笑みで。
顔だけじゃなく、言うことまでヤツそっくりだった。
「ハイジ二号……」
「あ?」
無意識だった。
赤ハイジを見た率直な感想を、私は口に出してしまっていた。
だって「そうなんですてへっ☆」とか言えないし。覗こうと思って覗いてたわけじゃないし!
というよりも、ハイジ二号って何者!?何がどうなってんの!!
もしかしてこれが噂に聞く、ドッペルゲンガーというやつなんだろうか。
今、私の前にいる赤ハイジは緑ハイジの分身だったりするんだろうか。
たしか自分のドッペルゲンガーを見ると、死ぬって聞いたことがある。
だとしたら、もしかして赤ハイジに会ったりしたら緑ハイジは死んじゃうんじゃ……。
あれ、でも緑ハイジがドッペルくんで赤ハイジが本物だったら、赤ハイジが死んじゃう?
いや、緑ハイジが赤ハイジで赤ハイジが緑ハイジで……
ハイジがハイジで赤が緑で緑が赤で…………
うわああややこしいいい!!わけがわからん!!!
「ねぇどっちがドッペルくん!!?」
「はぁ?……おねーさん、頭大丈夫か?」
勢い余って頭から漏れ出た私の発言に、赤ハイジが心配と哀れみを混ぜた視線を送りつけてくる。
もうちょっと落ち着こうか自分。パニくりすぎてる。
これじゃ不審者同然だし、げんに赤ハイジの目がそう言ってる。
なんかハイジに「お前頭まで可哀相なヤツなんだな」と言われてるようで、情けなくなった。

