通い慣れた通学路も、ハイジが横にいると初めて通るような感覚に陥る。
通行人からじろじろと視線を浴びるのは、この緑頭のせいだ。
ハイジはまったく気にしていないけど、注目されるのが苦手な私は居心地悪くてしょうがなかった。
さっきから、ハイジはしきりにあくびをして眠そうに目を擦っている。
「そんなに眠いんなら別に来なくてよかったのに。徹夜でもしてたわけ?」
「まぁ徹夜っていや徹夜だな。女が寝かしてくんねえから頑張りすぎちゃってよ~」
「……あっそ」
聞いた私がバカだった。
エロキングジュニアだけあって、コイツからもいやらしいオーラが滲み出ている。
こういう話題に不慣れな私をおちょくろうとしている笑みが、神経を逆撫でしてくる。
「にしても、お前も純ジョーなフリして大胆な女だな」
「は?」
「ジローちゃんのナニを舐めるって?」
ハイジの口から出た言葉に、固まる。
そうだ。
コイツが家に来た衝撃で忘れてた。
昨日の『舐める』発言を!!!
あんな、あんな大勢の人の前で私はなんてことを……
ハイジにまで伝わってるなんて……!!
「あーあ、俺も言われてみてーな女に。舐めさせてくださいってなぁ」
「ヤダやめてよ、朝っぱらから!それに舐めさせてなんて言ってない!!舐めますって言っ……じゃなくて!!あれはそうするしかなかったんだもん!そうしなきゃジローさんに小春を助け……わあぁぁあ!!!」
「お、おい!どこ行くんだよ!!」
正気を失った私は走って近くの公園に逃げ込み、気がつけばジャングルジムに登っていた。
てっぺんまでくるとスマホを取り出し、『舐める 意味』で検索をする。
【舐める: 舌の先で撫でるように触れる 】
失神しかけた。
しし、舌の先で撫でるように触れる!?ジローさんを!!??
追いついたハイジが慌ててギリキャッチしてくれたのでジャングルジムから転落死はなんとか免れたものの、ある意味死んだ、と思った。
「イイ歳してこんなとこ登ってんじゃねえよサルかお前は」と、呆れ顔のハイジ。
「サル……見ザル言わザル聞かザル……な、舐めザルとかいないのかな」
「いてたまるか」
ヤツに強引に、ジャングルジムから引きずり下ろされる。
しまいには登校中の小学生に一連の流れを目撃され、
「なー、アレこーこーせーだろー?」
「あんなオトナにはなりたくないよなー」
「すげー、アタマが緑のにーちゃんいるぞ」
「ブロッコリーだ」
「いやピーマンだろ」
「ネギだよ」
「マリモ星人」
「弁当に入ってる緑のギザギザだ」
と、ハイジは緑野菜代表みたいになってた。


