「いや、俺も昼に行こうと思ってたんだけどよ、まぁ色んな事情があってだな……」
ジローさんの鋭い切り込みに、ちょっと勢いの落ちた飛野さん。
なんで気まずそうにしているんだろう。
「迷ったんだろ、また」
「!」
ジローさんは淡々と、飛野さんに言い放った。
図星だったのか、飛野さんの肩が一瞬だけ揺れた。
「久々だもんな、ここ来んの。入院してる間に道忘れたんだろ。で、今頃やっとたどり着いたんだろ。昼前に家出たくせに。15分もありゃ着くはずなのに」
「ぐ……!!」
攻撃の手を一切弛めずに、ジローさんは飛野さんに攻め込んでいく。
血も涙もないジローさんの加減なしの猛追に、飛野さんはKO寸前だった。
反論もできないようだった。
この人……何でもないフリしといて、さっきの飛野さんへの仕返しなんじゃないかしら。
ジローさん、クールを装って意外と負けず嫌いなのね。
それにしても飛野さん、学校への道を忘れるってどんだけ!?
通学三年目なのに!!
いくら久しぶりだからって、通常15分の道のりを4時間かけて来るって……どんな遠回りしたらそこまでかかっちゃうのか、そっちの方が気になるよ!!
以前に私がジローさんに、飛野さんについて尋ねた時、彼は「すぐ迷子になる人」って言っていた。
こういうことだったんですねジローさん。
それも半端ない迷子っぷりなんですね……。
飛野さんのこれからの人生が、本人でもないのに物凄く心配になってしまった。
「ったく、ほんとお前は可愛げのねえ後輩だな!もういい、黒羽に話聞くからよ」
悔しいのか笑顔を引きつらせながらジローさんを睨むと、飛野さんはタイガのいる大教室に行くみたいだった。
けれどその前に、彼は私達に向き直った。
「お前らは?もう帰るのか?」
ジローさんに極度の方向音痴を暴露されたからか、飛野さんはどこか恥ずかしそうだ。


