気まぐれヒーロー




「ジローと……いや、俺達とやり合うってのは、そーいうことだ。覚えとけ」



刺すような鋭い視線で、飛野さんは魁帝の男に念を押し、スッと立ち上がった。


そして最後に一言、ヤツらに告げた。



「ま、桐生に会ったらよろしく言っといてくれ。歯全部折られる前にな」



物騒なことを平気で言ってのけながら、ニコリと極上のスマイルを浮かべる飛野さんに、一段と男達の顔から血の気が引いていった。



前言撤回。



いい人かもしんないけど、それ以上に飛野さんからは危険な香りがした。



「黒羽とクソガキ二人は?」

「トラは学校ん中にいる。ハイジとケイジは、どーせバイトか女だろ」



魁帝のヤツらをその場に残し、学校へ戻りながら飛野さんがジローさんに聞くと、ジローさんはめんどくさそうに答えた。


「変わんねえな」と、飛野さんはくしゃりと笑う。


それに対して「一ヶ月そこらで、変わるわけねえだろ」とジローさんが返す。


この二人の間にある関係って、どんなものなんだろう。


ジローさんは飛野さんに敬語を使うこともないし、飛野さんもジローさんに遠慮なんてしていないみたいだ。


飛野さんは三年生だけど、だからといってジローさんより偉いっていうわけじゃないのかな。


同等の立場なんだろうか。



飛野さんも、みんなにキャーキャー言われるような有名人なのかな。


でもこの人はハイジやケイジくん、タイガ達とは違って落ち着きを感じるのは……上級生ならではの貫禄?



「それとな、ジロー」



さっきまで朗らかだった飛野さんの顔から、笑みが消えた。

声も、真剣味を帯びている。



「わかってんだろうけど、軽率に動くな」



不意に足を止めた飛野さん。


少し前を行っていたジローさんも、歩くのをやめた。



けれど、ジローさんは振り向かない。背中を向けたままだった。