「きゃー!!ハイジくんだよ!!」
「うわっ、俺、実物初めて見た!!」
「早く、写真!動画も!!」
急に色めきだつ教室。
な、何!?何が起こってるの!?
クラスメイト達は一斉に廊下に出て行った。
女子も男子も、やたら興奮している。
どうやら私の教室だけではないらしく、フロア全体が騒がしい。
一年の階は、一気にお祭り騒ぎみたいになっていた。
「も、ももちゃん!ハイジくんだって!!」
小春もお箸を置き、瞳をキラキラさせて立ち上がる。
廊下に出たいのか、なんだかうずうずしていた。
なぜ?
「小春……ハイジ知ってるの?」
「何言ってるのももちゃん、知ってるよぉ!超有名じゃん、この学校じゃ知らない人なんていないよ!」
えええ!そ、そうなの!?あいつそんなに有名なの!?
むしろ、私はなんで知らなかったの!?
「ハイジくん滅多に教室に顔出さないから、ここに来るなんてレアなんだよ!ほら、ももちゃん、見に行こう?」
そう言うとワクワクした顔で小春は私の手を引いて、みんなと同じく廊下に出ようと歩き出した。
いや、待って……この状況はダメよ!
こ、こんな芸能人並みの扱いを受けてるハイジが、私を探してるだなんてバレたら……
もう普通の生活が、送れなくなる。
田川への告白以上に、痛い視線が私を襲うことになる!!
そ、それだけは勘弁してください……。
「待って、小春!私急用が……!」
聞こえていないのか、小春はぐいぐい私を引っ張っていく。
この小さな体のどこにそんな力が……!!

