気まぐれヒーロー




ふらりと、ジローさんが一歩足を踏み出した。


虫が花の蜜に引き寄せられるように、小春という可憐な花にミツバチジローさんがふらふら寄っていく。


これは……一体何が起こってるの!?


やっぱり女嫌い治ってたの?それで小春の可愛さにノックアウトされちゃったの!?


わかんない、何がどうなってるのか理解不能……!!



「お、おい!動くなって言ってんだろうが!!」

「きゃっ……!!」



そうだった。

忠告されたにも関わらずジローさんがミツバチジローになっちゃったから、男は小春の腕を強く捻った。



「やめてよ!!」



ヒヤリと、冷たいものが背を走る。

痛そうに眉を寄せる小春を見て、ビタッとジローさんは停止した。



「ああっ!てめえ何てことすんだ!!いたいけな動物をイジめるんじゃねえ!!」



大変ショックを受けて慌てふためいているジローさんは、男に文句を言っていた。



……いたいけな動物……。



何だったんだろう、今彼の口から出たこの言葉は。


空耳?私の気のせい?


そういうことにしておこう。
ものすご~く嫌な予感がするから、そうしておこう……!!


多分、男も小春も心の中でそう思ってる。
声には出さないものの、表情に思いっきり出ている!!


“何言ってんのこの人”と……!!





「オンナを盾にしねえとタンカも切れねえなら、ケンカなんて仕掛けんじゃねえよ」





それは、本当に突然だった。



聞き覚えのない声が耳に入ってきたと思ったら、小春を捕らえている魁帝の男の背後に誰かが立っていた。


すごく背の高い、黒髪の男の人。

魁帝の男よりも、頭一つ分は高い。


うちの学校の制服を、適度に着崩している。

ということは、私達と同じ学校の人だ。



機嫌の悪そうな低い声で魁帝の男を威嚇すると、躊躇することなくその人は魁帝の男の頭を、片手でガッと鷲掴みにした。


「なっ……放せよてめえ!」とたじろぐ魁帝の男。



「……飛野さん」



固まる私の横で、ジローさんがぼそっと呟いた。


黒髪の人にその目を向けたまま。



飛野、さん?



もしかしてこの人が……ハイジ達が言っていた、飛野冬也……?