今になって、後悔している自分がいた。
ジローさんを連れてきてしまったこと。
わかってる、小春のためにはそうするしかなかった。
それにジローさんは、こいつらには負けない。
力に屈することはないし、怪我を負うこともない。
じゃあ、いいんじゃないの?
小春も助かって、ジローさんも無傷で。魁帝の男も撃退することができて。
けど、人を殴るということ……人に“暴力”をふるう場面を初めて間近で目にしてしまって、与えられる衝撃が大きすぎた。
相手が魁帝だったとしても、苦しむ人間を前にして表情一つ変えないジローさんが……まるで別人のようで、急に怖くなった。
「白鷹、動くんじゃねえ!!ちょっとでも動いたら、コイツの腕を折るぞ」
「小春!」
最後の一人……小春を捕まえている男が、ジローさんに脅しをかけた。
「や、ももちゃん……!!」
がたがたと恐怖する小春の腕を掴み、男はニヤリと口の端を吊り上げる。
それに反して腰が引けているように見えるのは、この男もジローさんを恐れているのかもしれない。
「ジ、ジローさん……小春が……!どうしよう……!!」
おろおろするしかない私はどうしようもなく無力で。結局ジローさんに助けを求めるしかなく、彼の顔を窺ってみた。
ジローさんの目は、小春に釘付けだった。
……何だろう、ジローさんはぴたりと静止している。彼だけ時間が止まっているみたいに。
瞬きさえ、していない。
「……ジロー、さん?」
「アレか。お前のトモダチ」
「はい、そうですけど……どうかしました?」
焦点は小春に合わせたまま、ジローさんはぼんやりとした声で私に尋ねた。
おかしい。何かがおかしい。
“人間の女の子”である小春をじーっと凝視しているジローさんは、変だ。
顔は赤くならないし、それどころか興味津々な目をしている。好奇心に溢れている!
ちょっと!何ごと!?
もしかしてもしかする!?
ジローさん……小春に一目惚れ!!?


