でも……迷ってる暇なんか、ないじゃん。
小春が怖い思いしてるのに、私がこれぐらい我慢しなくちゃどうするのよ。
どうにでもなる。別に死ぬわけじゃない。
ちょ、ちょっと恥をかけばいいだけなんだから。
腹をくくれ!女気を見せるんだ!!
くっと手を丸め、口を横に結ぶと、私はジローさんの手の平に狙いを定めた。
そして丸めた手を……断腸の思いで、置いたのだった。
腹を抱えて爆笑するタイガの笑い声に、死にたかった。
「よくできた」
だけど私の視線の先で、ジローさんが優しく笑うから。柔らかな声で、ナデナデしてくれたから。
涙腺が緩みそうになった。
でも、泣いてなんかいられない。
「ジローさん、お願──」
「行くか」
もう一回頼み込もうとした時、ジローさんは立ち上がって一言……呟いた。
「どーせやるんなら、ハデにやってこいよ」
ジローさんにそう言ったタイガの声は、楽しそうだった。
「え、ジローさん……それじゃあ……」
「忘れんなよ、さっき俺に言ったこと」
突然の急展開に、呆気にとられている私を見下ろすジローさんの目は、やる気に満ちていた。
……さっきのって……もしや、『舐める』宣言のこと、かしら……。っていうかソレしかないよね?
覚悟を決めて言ったんだ。
やっぱやめるなんて……そんな卑怯なことしない。
私はジローさんに、頷いてみせた。
ジローさんはほんの僅かにだけど、嬉しそうに目を細めた後、のそっと教室の出口に歩き出した。


