気まぐれヒーロー




「おはよ、ももちゃん」

「小春……おはよ」


小春の笑顔を見たら、ほっとした。
私には小春がいてくれる。それだけで憂鬱も、だいぶと軽くなっていた。


「ももちゃん……気にしなくていいよ。ももちゃんは何にも悪いことしてないんだからね!」


ああ、やっぱり小春の耳にも入ってたんだ。
元気づけようとしてくれる彼女に、私は笑顔を作ってみせる。


「うん……ありがとね。私は全然平気だから!」


普通に振る舞わなきゃ。また小春が泣いちゃわないように。
そう思いながら、私は何とか普段通り過ごしていた。


──そして、あっという間に時間は経ち。

“あいつ”と一方的に約束させられた昼休みが、とうとう来てしまった。


でも私は行かない。行きたくなんかない。



『俺がお前の人生変えてやる』



あれってどういう意味!?私、悪の道に引きずり込まれたくなんてないし!!

まだ純情乙女な女子高生でいたいし!!


もうハイジと会いたくない。
何されるか、恐ろしくて考えたくもなかった。

だいたい昨日初めて会ったばっかりなのに、私の人生勝手に変えられてたまるかと思った。


小春と教室でお弁当を食べながら、彼女の話に相づちを打ちつつも、頭の中は緑のハイジでいっぱいだった。


『こねェと意地でも探し出してさらうからな!!』


……まさか、まさかね。
たかが私ごときに、そこまでするはずがない。



そんな時だった。



「ももー!!どこだーー!!」



悪魔の声が、遠くから聞こえてきました。