気まぐれヒーロー




助けて、くれない。ジローさんは動いてくれない。


今、私の目の前にいるジローさんは、いつものジローさんじゃない。

 
おさんぽしている時のジローさんじゃ、ないんだ。


足を組んでポケットに手を突っこみ、ソファーに体を沈める彼は無言のまま。



「ほ、ほんとは強くないの?だから行ってくれないの?魁帝が怖いの?ジローさん、そうなんでしょ!?」



後で考えれば、よくもまあ白鷹次郎にこんなことを言ったな、と思う。


でも、必死だった。とにかく必死だった。

 
小春を助けられるなら、何だってよかった。

それでも……返事は返ってこない。
私の声だけが、虚しく教室に響くだけ。



「……俺たちがいこうか。白鷹さん、それならいいだろ?」



そんな時。白鷹ファミリーのおにーさん達の一人が見兼ねたのか、ぽつりとジローさんに言葉をかけた。

この状況を打破できるのなら、誰にだって縋りたかった。
だからその申し出は私にとって、心底有り難いものだった。


だけど……アイツらは“白鷹次郎”が目的なんだ。

ジローさんじゃなきゃ、小春に何するかわからない。


おにーさんの好意は嬉しかったけど、断ろうと口を開きかけた。



「オメーら勝手なことすんじゃねえよ」



私のセリフを代弁するかのように、トラさんは低い声と共に刺すような視線をおにーさんに送った。

立ち上がっていたおにーさんはそれを受けて、止むを得ず再び腰を下ろす。

ピリピリした空気が教室内を取り巻いて、緊張の糸が張り詰めていく。


何か……行っちゃいけない理由があるの?


せっかくおにーさん達が行くって言ってくれたのなら、どうしてわざわざ止めたの?

自分達は関係ないから、めんどくさいから嫌なんでしょう?