「……そんな人と、私達何の関係もないのに呼んでこれるわけないじゃない。自分達で呼びにいけば?」
落ち着いてよ、私の心臓。
声、揺れてないかな。ちゃんと話せてるかな。
そう……ジローさんと、平凡な私と小春が知り合いなわけないとわからせないと、解放してくれない。
小春はもう涙を目に溜めて、恐怖に飲まれている。
腕をがっちり拘束されている彼女を早く助け出したいのに、非力な私じゃどうにもできない。
「なに生意気な口きいてんのお前。呼んでこいっつってんだよ」
私を見下ろす冷たい目に、背筋がゾクッとした。
危険だと、本能が警鐘を鳴らしてる。
何をするにも躊躇いのなさそうな、冷酷な眼差し。
「オトモダチがどうなってもいいのかよ。こんな細い腕、ちょ~っと力加えたら簡単に折れそうだよなぁ」
「、うっ……!」
小春の腕を掴んでいた男が、さらにギリッと力を入れるのを見て……もう逆らおうなんて、思わなかった。
「やめて!小春には何もしないで!呼んでくる、白鷹先輩を呼んでくるから……!!」
涙目になる。焦りだけが胸を占めていた。
こいつらは、私が従わなかったら本当に小春に危害を加えるかもしれない。
取るべき行動は、一つ。選択肢なんて、ない。
「センコーにチクったりすんじゃねえぞ。白鷹以外のヤツ呼んできたら、コイツの腕へし折るからな」
小春を見やった後、魁帝の男はそう念を押してきた。私は血の気の引いた顔でこくこくと頷いて、了承の意思を示した。
「小春、すぐ戻ってくるからね」
震えだした小春に一言告げると、彼女は一度弱々しく首を縦に振った。
そして私は踵を返すと、無我夢中で校舎に走り出した。
ジローさんがまだ、『あそこ』にいることを願って。

