気まぐれヒーロー




「抱き心地いいな、お前」



私の肩に顔を乗せて、そんなことを耳元でジローさんが呟くもんだから。


ドキドキが最高潮に達して、頭がくらくらしてきた。



「あ、あのっ!ひひひひひ、」

「ひひ?」

「マントヒヒ……じゃなくて!ひ、飛野さんってどんな人なんですか!?」



パニくって、自分でも何言ってるかわかんなかった。

とにかく何でもいいからジローさんに話をふらなければと思い、咄嗟にさっき話題になっていた“飛野冬也”のことを聞いてみた。



「飛野さんはマントヒヒじゃねーよ」

「わかってますってば!ちょっと間違えただけです!ジローさんのお友達、なんですか?」

「お友達って何だよ、飛野さんは飛野さんだよ」

「……怖い人?」

「すぐ迷子になる人」



ええっ!それどんな人!?

すぐ迷子になるって……子供じゃないんだから。

ジローさんに聞いたのが間違いだった。全然飛野さんの人物像がつかめない。

むしろすぐ迷子になっちゃうマントヒヒが飛野さんのイメージとして、私の頭にインプットされる。


うろうろと迷っているマントヒヒを想像していると、突然ほっぺたをジローさんがぺろっと舐めてきた。



「ぎゃあああ!舐め、……今、舐めた!!」

「いちいちキャンキャン騒ぐなよ」

「キャンキャンって……!この前舐めないって約束したばっかじゃないですか!破った!ジローさんの約束破り!!えっち!」

「えっちじゃねえし。味見しただけだよ」

「あ、味見!?」

「お前のこと『桃』って言うじゃねえか、他の奴らが。お前も自分で言ってたじゃねえか」

「……で、本当に桃かどうか確かめようと?」

「ウソついたのお前だろ。全然甘くねえよ」



顔をしかめるキング。

出ましたジローワールド!私の思考回路はショート寸前!!


ねぇジローさん……お願いですから、まともな会話をしましょう……。