でも、でもね。私がジローさんの女嫌いを治すんでしょ?いや、まあできるかどうかは別として。
なぜそうなったのか、理由がわからないとどうやって治したらいいか見当もつかない。
ハイジは何も言ってくれなかったし、今のままで……ジローさんの亡くなったペットの代わりとして彼と一緒にいて、ただそれだけで何かが変わるんだろうか。
確かにジローさんは顔を赤くすることもなく鼻血を出すこともなく、私と話してくれるし手をつないでくれる。
けど、それって私を「女」としてじゃなく「犬」として見ているからできることであって、彼の女嫌いを治すなら「女」として接しないと意味なくない!?
っていうか、私、どうやったらジローさんに「人間の女」として見てもらえるの!?
……いっそ、すっぽんぽんで迫ってみるとか?
できねええええ!!痴女じゃん露出狂じゃん私の方がド変態じゃん!!!
ジローさんを押し倒すのもムリなのに、そんな高等テクは私みたいな色気皆無な凡人にゃ一生かかってもできっこない!!
「タマ」
一人で頭を抱えて悶絶していると、名前を呼ばれてジローさんが私を見上げていた。
「は、はい」
「こっち来いよ」
急にぐいっと腕を掴まれて引っ張られ、抵抗する間もなく私はジローさんの足の間に座らされた。
「ちょ、ちょっと」
「何だよ」
「近いです……!」
「だから?」
離れようとしたって後ろからジローさんの腕が体に巻きついてきて、逆に密着する体勢になってしまった。
背中から伝わる、ジローさんの温もり。
背後からぎゅって抱き締められて、ありえないくらい心臓が暴れている。
ほんとこの人って唐突すぎる……!!男の人に耐性のない私には、パニックの嵐!!
ジローさんじゃなくて私の方が、トマトみたいに顔が真っ赤っかになってるよ……。
この座り方って、カップルだったらまさに憧れだけれども……私、ペットだし……。
虚しくなるのは、なぜ?

