気まぐれヒーロー




「そういえばさ、飛野(ひの)さん退院したってよ。クロちゃん知ってた?」



キングダムで例のソファーに座っている、私とジローさん。


向かいにはハイジとトラさん。ケイジくんは、今日はいなかった。


ハイジはトラさんのことを、クロちゃんと呼んでいる。

黒羽だからだろうけど、いっぱい呼び名があってややこしいなと思った。普通に「タイガ」って呼ぶ人もいるし。


まぁトラなんて呼ぶのは、ジローさんと私だけなんだけれど。




「マジかよ!やっとか。けっこう長えこと入院してたなあの人。ガッコー来てんの?」

「いや、まだだろ。来てたら顔見せに来ると思うし」

「っつーかあの人ダブんじゃねえか?出席足りてんのかよ」

「ほとんど夏休みの期間だったから、いけんじゃね?」




ジローさんにさっきから色んな首輪を着けられては外され、まさに着せ替え人形状態でうんざりしていた私は、二人の会話に耳を傾けていた。


……ヒノ?

一体誰なんだろう。


っていうか人の出席心配するより、自分の出席はどうなのよトラさん。あんた学校来てても、授業受けてんのかい。


トラさんだけじゃなく、ここにいる人達全員大丈夫なんだろうか。私の知らないところで、ちゃんと授業に出ていたりするのかしら。


ジローさんが授業受けてる姿なんて、これっぽっちも想像できない。


でもジローさんとトラさんが二年生ってことは進級できてるわけだから、一年の時は出てたのかな。


と、ぼやっとあれこれ考えていると「こっちのがいいな」と、ジローさんが私の首に赤いリボンを結んで満足そうに眺めていた。




「ねぇ飛野さんって誰?」




何となく彼らの会話のネタになっている人が気になって、二人に尋ねてみた。



「お前ほんっと何も知らねーんだな。飛野 冬也(ひの とうや)。ここの三年だよ」



ハイジが呆れ果てたような目つきで、投げやりに教えてくれた。