出会うまでは、“ヤバい”とみんなに噂される危険な人なんだと思っていた、ジローさん。
あの初めてのお散歩の日以来、私の中で彼の印象は大分と覆ってしまった。
まだ彼のほんの少しの部分しか私は触れていないんだろうけれど、興味を持ち始めているのは確かだった。
ジローさんを一言で表すなら、変人以外の何者でもない。
どうして彼が不良をまとめているのか、世界の七不思議よりそっちの方が私は気になる。
そしてそんなジローさんについていっている白鷹軍団のおにーさん達のことも、疑問だった。
何より、ジローさんのペットを承諾しちゃった私が最大の謎。
あの人の癒しの手に誘惑されて負けちゃった自分の弱さに、後になって落ち込んだ。
これから待ち受けている犬人生に、ため息は尽きない。
「ごめん小春、ちょっと行ってくるね」
「うん……ももちゃん、大丈夫?」
昼休み、呼び出しをくらった私は小春にそう告げて席を立った。
心配そうなつぶらな瞳に、「大丈夫だよ」と明るく笑ってみせた。
あれから小春には、ハイジ達とは和解して仲良くなったと一応納得してもらって、時々彼らのとこに行かなければならないと説明した。
このことを秘密にしておいてほしい、ということも。
それはもう驚いていた小春だったけど、そう言っておかないとたびたび失踪していては彼女も事情がわからず、不安になっちゃうだろうから。
「なんで!?」とか「まさかももちゃんも、そういう道に走っちゃうんじゃ……」なんておろおろしていた小春。
私も一瞬ヤンキーになった姿を、自分で想像してみた。
うんこ座りで首輪着けてタバコをスパーっと吸いながら、ガンを飛ばす。
『おうおう見てんじゃねえよ、てめえも犬にしてやろうか!』
……うん、ないな。
「間違っても絶対ヤンキーにはならないよ」と、彼女に念を押しておいた。
だけどいつまで隠し通せるだろう。
それに小春に隠し事をしている後ろめたさもあって、どこかやり切れない気分になってしまう。
っていうか……私、いつ彼らから解放されるんだろうか。

