気まぐれヒーロー



「ももちゃん、どうだった!?」


教室に戻ると、たたっと私に駆け寄ってくる小柄な女の子。


卯月小春(うづきこはる)

私の大切な、友達。

背が低くて愛嬌のある、くりっとしたつぶらな瞳。
リスとかハムスターみたいな、小動物を連想させる可愛い女の子。

優しくておっとりしてて、小春は本当に女の子らしい。
私なんてせいぜいタヌキがいいとこ……。

大失恋の後だから、余計悲しくなってきた。


「あはは、ダメだった~。まぁわかってたけどね、相手は田川だし」

「田川?」


はっ、ついさっきの勢いで呼び捨てにしてしまった!


「あ、田川くん!ね!ほら、やっぱり彼って人気者だし、彼女いたみたい」

「え、そうなの!?そっかぁ……でも、ももちゃん頑張ったね」


ショックを受けて瞳をうるうるさせる小春。なんで小春が泣きそうなんだろう……。

田川や本城さんに言われたことは、小春には言わなかった。彼女を心配させたくない。

ついでにハイジのことも伏せておいた。
ヤツのことは、なかったことにしておきたい。


「偉いよ!告白するだけでも私、尊敬するよ。すっごく勇気がいることだもん!すごいよももちゃんは!」


感極まって、ついに泣き出しちゃった小春。
それでも「すごい偉い」と何度も口にする彼女の頭を、慰めるように私は撫でていた。

普通、立場が逆な気もするけれど。

でも私は小春のこういうところが好きだった。人の気持ちになってその人以上に共感してくれる小春に、いつも救われてるんだ。


「ありがとう、小春。もう遅いし、帰ろっか」

「うん。あのねももちゃん、駅前のクレープ屋さんに新作が増えたんだって!クラスの子に聞いたんだ、食べにいこ!私、おごるから!!」

「ほんと?やったぁ、嬉しい!」

「えへへ、いこいこ~!」


本当は今でも泣きそうなんだけど、小春……あんたのおかげでそれも引っ込んじゃったよ。

小春がいなかったら、立ち直れなかった。その笑顔に癒されてるよ。

大好き、小春。


「ああっ、今日財布……忘れてきたんだった……ごめんねももちゃん……」


……うん、そういうとこも大好きだよ小春ちゃん。