月白の初恋

その時だった。

馬車がガタンと揺れた。

「た、大変です!竜巻に巻き込まれました!」

馬に乗っていた護衛兵がそう叫んだ。

だけど、その時には私もリアトも馬車から放り出されていて、私はなんとか木にしがみついたけど、リアトは崖にぶら下がってしまっていた。

ボロボロの土を片手で掴んでいるのには限度がある。

リアトが崖に落ちるのは時間の問題だ。

私は急いでリアトの腕を掴んだ。

「リアト!」

「エレ、逃げて!この風じゃエレまで吹き飛ばされる!」

「でも…リアトは?」

このまま私が見捨てれば、リアトがどうなるのか、私にだって想像できる。

「…大丈夫。エレが俺に何かあった時も城で暮らしていけるように手続きしてある。
学校にも行けるし、綺麗なドレスや靴も買えるよ。
欲しいものはなんでも手に入る。
ちゃんと最上の人生になるようにしておいたから」

リアトはにっこりと笑う。

出会った時と同じように。

だけど、私の目には涙が溜まっていた。

「…それじゃ、ダメなの…欲しいものはなんでも揃えてくれるんでしょ?
それじゃ揃わない…!」

「は、はあ?大丈夫だよ。ちゃんと欲しい物は全部揃うようにしてあるから」

「違う!リアト。あなたが居ないと意味ないの!どんなに綺麗で高価な物に囲まれていたって、リアトが居なきゃ楽しくない!」

「……どうして?俺が居ても居なくても、楽しいことはあるはずだ。
暇になったらサーカスや楽団を呼べば良いし、素敵な男性と結婚もすれば良いよ。
俺に執着しなくたって、素敵なパートナーが現れるから」