たまらず声をかけると、千咲は大切な家族を失ったばかりだった。
自責の念に苛まれ、今にも消えてしまいそうな彼女を放ってはおけない。
話を聞く限り、千咲の祖母の急逝は千咲のせいではない。けれど他人から言われたところで納得しないであろうことは、彼女の様子を見ていればわかった。
それに、身内ではないけれど、自分のせいで命が失われてしまったと嘆いた経験は櫂にもある。もっとこうしていればという埒のあかないたらればに囚われて、身動きができなくなるのだ。
少しでも彼女の気持ちに寄り添いたくて、櫂は千咲に共感するように過去の話をぽつぽつと語った。情けない話をするのを躊躇わなかったわけではないけれど、それでも立ち上がって前を向くしかないのだと、彼女を励ましたかった。
『先生は、強いですね⋯⋯』
今にも泣きだしそうなのに、千咲は笑う。まるで自分には悲しむ権利などないかのように振る舞う痛々しさに、櫂の胸まで抉られるようだった。
『泣いたらいい』
そう提案したのは、純粋に泣くことで気持ちをリセットするべきだと思ったからだ。



