櫂は頷きながら、沖田の肩を叩いた。
「詳しい検査をしたが、やはり肋骨骨折だけで他に臓器損傷などは見られなかったそうだ」
内臓を保護するように覆っている肋骨の骨折は、折れた骨で臓器を傷つけてしまうことがある。そうなると命に関わる場合も多い。それを危惧して櫂もヘリ機内でも慎重に診察したが、幸いにも打撲と骨折のみで済んだようだ。
櫂が退勤前に聞いてきた情報を伝えると、沖田はホッとした表情を浮かべる。
「そっか。子供なら回復も早いよな」
「あぁ」
「⋯⋯子供といえばさ、あの人も小さい女の子連れてたよな」
今思い出したかのように、沖田は目を光らせる。彼の言う『あの人』が誰を指すのかは言わずもがな。
羨ましいほどの切り替えの速さに、櫂は「またそれか」と呆れたが、それでも彼は食い下がってくる。
「ワケあり? そろそろ教えてくれてもいいだろ。あの美人とどういう関係?」
「前にいた病院の近くの消防で勤務してた救命士で、顔見知りだったんだよ」
「救命士? へぇ、女性では珍しいな。それで? 付き合ってたのか?」



