二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


運行管理室から傷病者の状態を無線で聞きながらヘリに乗り込み、必要だと思われる器材をフライトナースとともに準備する。

今日一緒に乗り込むフライトナースは、櫂と同い年の沖田智春。櫂がこの総合医療センターに転院してきてからの付き合いだが、必要な看護ケアを見極める判断力や主体性を持ち合わせる優秀な看護師だ。

人懐っこい犬みたいな男で、いつの間にか職場の同僚というよりも友人のように接するようになった。

沖田は千咲と再会した際も一緒に乗務しており、あの日の櫂の様子から、千咲との間になにかあるに違いないと勘づいているらしい。

「それで先生、あの女性とは進展ありましたか?」

就業中のため『先生』と呼んでいるが、好奇心を隠しきれていない。

数日前までは否定していたのに、なにも答えない櫂に肯定とみなしたのだろう。沖田がわくわくした表情を隠さずに身を乗り出してくる。

「えっ、マジで? 進展あったのか?」
「口じゃなくて手を動かせ。もうすぐ着くぞ」
「⋯⋯はーい」