二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


救急医として働く彼から「子供を堕ろしてほしい」なんて言葉を聞きたくはない。千咲はひとりで産む決断をした。

そして、それと同時に誓いを立てた。

(もう二度と恋なんてしない。私は、この子のためだけに生きる)

子供を持つからには、自分と同じような目に遭わせたくない。母親と同じ轍は踏まない。

そう強く心に誓ったのだった。


千咲は消防官として仕事を続けているものの、救命士として救急車に乗っているわけではない。消防本部の警防部へ異動し、資器材の在庫管理や救命講座の手配などをする事務として働いている。

会社員と同じように、就業時間は平日の朝九時から夕方の五時まで。昼休みも十二時から一時間きっちり取れる。以前と働き方は雲泥の差だ。

今日の昼食も、保育園に持たせた紬のお弁当の残りを詰めたものだ。祖母が作ってくれていたお弁当ほど彩りはよくないけれど、この一年で料理の腕は上達したと思う。