翌朝。千咲が目を覚ますと、隣にあったはずのぬくもりが消えていた。
寂しさを感じながら重だるい身体を起こして立ち上がり、辺りを見回す。すると、パウダールームから櫂の声が聞こえてきた。
(電話⋯⋯? もしかして病院から呼び出しとか?)
腕の立つ救急医の櫂ならば、休みの日でも呼ばれることがあるのかもしれない。
そんな千咲の考えは、すぐに間違いだとわかった。
「はっ? 離婚?!」
焦ったような大きな声。それからすぐに声を潜め、「どういうことだよ」と相手に詰め寄っている。
仕事相手ではなく、プライベートな電話だとすぐに察した。
(今、離婚って言った⋯⋯? ううん。聞き間違いだよね)



