頭の先から爪先まで全身が蕩けてしまうと本気で心配になるほど、櫂はひたすらに千咲を甘やかし、優しく触れ、情熱的に愛してくれた。
「大丈夫だから。全部、俺に預けて」
慣れない千咲の強張りを辛抱強く解きほぐし、焦れったいほどに慎重に事を進めていった。優しい指先、熱い舌、たくましい身体、櫂のすべてで大切に触れてくれているのだとわかる。
唯一の家族を失くした悲しみはまだ癒えないけれど、こうして千咲を大切にしてくれる人がいる。その事実は心に吹きつけていた冷たい風から守り、小さな火を灯してくれる。
目の端から、涙がひと筋零れた。
「泣きたいなら泣いていい。千咲が抱えているものを、俺も一緒に背負うから」
悲しみを奪うように口付けられ、快感に震える身体だけでなく、心が彼に傾いていく。



