自分で言いだしたにもかかわらず躊躇いを見せる千咲の唇に、櫂がそっと自分のそれを重ねた。
驚いて目をまたたかせると、彼は千咲を強く抱きしめる。
「君は頑張ってる。もう自分を責めなくていい」
すべてを肯定するように包み込まれ、千咲の瞳から先ほどよりもあたたかい温度の涙が零れ落ちる。櫂の服を濡らしてしまうと距離を取ろうとしたが、彼がそれを許さなかった。
腕の中に囲われたままおずおずと顔を上げると、柔らかく唇が重ねられる。二度、三度と啄まれ、次第に口づけは深くなっていった。
「ベッドに連れていってもいい?」
こくんと頷くのを待って、櫂は千咲を軽々と抱き上げた。ベッドルームへと移動すると、キングサイズのベッドに千咲の身体を横たえ、そのまま覆いかぶさってくる。
普段、和室に布団を敷いている千咲は、そのふかふかな寝心地のよさに驚く。けれど、自分に跨がり、劣情を宿した瞳で見下ろす櫂を目の当たりにし、そんな呑気な考えは一瞬にして吹き飛んだ。



