「頑張ってる君を甘やかすのも、寂しい時に抱きしめるのも、俺がしたい。他の誰にもその役を譲りたくない。今は、俺を利用したらいい」
「利用なんて」
「それで少しでも気が紛れるのなら本望だ」
「⋯⋯このまま、帰りたくないって言うかもしれませんよ?」
千咲の発言に、櫂は目を見開いた。
自分でもどうかしていると思う。好意を伝えられたとはいえ、まだきちんと交際をしているわけではないのだ。これでは、本当に彼の気持ちを利用していることになる。
けれど、祖母のいない自宅に帰るのが怖かった。せっかく櫂に話を聞いてもらって気分が浮上したのに、再び寂しさの底へと突き落とされるのが怖い。
一時でもその寂しさを忘れられるのならば、優しく包み込んでくれる彼に縋ってしまいたい。
「板倉さんが望んでくれるのなら、俺は遠慮しないよ」
「本当に、先生はいいんですか? 私、今最低なことを――」



