二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


「⋯⋯あの、私、こんな見かけをしてますけど、恋愛慣れしてるわけじゃないんです」

千咲がそう言うと、櫂は怪訝な表情をする。

「母に似て派手な顔立ちのせいか、よく勘違いされるんですけど、あまり経験もないですし、そもそも恋愛を避けてきました。だから――」
「俺が遊びで君に声を掛けたって、そう思ってる?」

咎めるような声色だったのは、きっと気のせいではない。千咲が身を竦ませると、櫂は悔しそうに顔を歪めた。

「板倉さんと会うのはいつも現場だったから、どうやって距離を縮めようかとずっと考えてたんだ。でも今の状況だと、弱みにつけ込んでると思われても仕方ないよな」
「いえ、そうじゃなくて⋯⋯!」

千咲は櫂の言葉を遮るように声を上げた。

「先生が弱みにつけ込んでるなんて思ってないです。まさか仕事をしている姿をそんな風に思ってくれていたなんて、ビックリしたけど⋯⋯嬉しいです」
「板倉さん」