地味な格好なのは『子供を生んでオシャレをする時間がなくなったから』という理由ではない。昔からモノトーンでシンプルな服ばかりを選んで着ていた。
千咲は切れ長の大きな目に筋の通った小さめの鼻、薄い唇にシャープな輪郭と、多少目立つ容姿をしている。
ぱっちりとした猫目が印象的な派手顔のため、周囲からは『遊んでいそう』『男に媚を売っている』などと揶揄されることが多く、恋愛に奔放な母親に似たこの容姿が、千咲は好きではない。いつしか自然と目立たないような格好をするようになった。
その反動なのか、娘の紬にはついフリフリの可愛らしい格好をさせてしまう。今日も淡いラベンダー色のワンピースを着た彼女はご機嫌だ。
「よし、紬。頑張って歩いて、ばぁばにご挨拶に行こうね」
「うー」
正確には紬にとって曾祖母にあたるが、呼びやすさを優先している。まだ喃語しか話さない紬と会話にならない会話をしつつ、千咲は肩からずれたリュックを背負い直した。



