千咲は櫂の背中をおずおずと掴み、ずっと表に出せなかった感情を溢れさせた。
「おばあちゃん、寂しい⋯⋯。ひとりぼっちは寂しいよ⋯⋯」
千咲を抱きしめる腕に力が込められる。
「うん」
「もっとおばあちゃんと出かけたかった。料理を教わりたかった。もっと、ずっと、一緒にいたかった⋯⋯」
これまで我慢していた分、千咲は子供のように泣きじゃくる。
たったひとりの家族だった。かけがえのない大切な人だった。だからこそいなくなってしまったのが悲しくて、とてつもなく寂しい。
どれくらいそうしていただろう。
ひとしきり泣くと、少しだけ気分が晴れたような気がした。
「す、すみません」



