食事を終え、満腹になっても、千咲の胸にぽっかりと空いた穴は埋まらない。
「私に悲しむ資格なんてないんです。頭が痛いって言ってたのに、薬を飲んだら治るから早く仕事に行きなさいっていうおばあちゃんの言葉を真に受けて⋯⋯。一緒に病院に行こうって、検査してみようって、私がひと言声を掛けていたら、おばあちゃんは⋯⋯」
「板倉さん」
隣に座る櫂が千咲の腕を引き、包み込むように抱きしめる。
「そういう時は、ただ『悲しい』『寂しい』って泣くだけでいいんだ」
「先生⋯⋯」
「大切な人を失ったことを悲しむのに、資格なんて必要ない」
千咲の頭に、櫂の大きな手がのせられる。
『泣いてもいい』
そう促す彼の手はあたたかく、幼い頃に祖母から何度も頭を撫でてもらった記憶が蘇ってくる。



