スモークサーモンのサラダやオニオンスープ、サンドイッチとチーズリゾットなどが、重厚なソファーセットの前のローテーブルに並べられる。
「会った瞬間から顔色が悪いと思ってた。あまり食べてないだろう?」
「⋯⋯食欲がなくて」
「気持ちはわかるけど、少しは胃になにか入れたほうがいい。俺も小腹が空いたんだ、一緒に食べよう」
櫂に促され、湯気の立つオニオンスープに少しだけ口をつける。あたたかくて優しい味わいのそれは、祖母が作ってくれた料理を思い起こさせた。
「おいしいです。おばあちゃんも、よくスープを作ってくれました。体力勝負の仕事だからって、野菜をたっぷり入れてくれて」
「そっか。料理上手で、優しいお祖母様だったんだな」
言葉にならずに頷くと、反動で大粒の涙がぽたりと落ちた。
一度決壊してしまった涙腺は、どれだけ手のひらで拭おうとも止められない。
千咲は食事を進めながら、ぽつぽつと祖母との思い出を語り始めた。



